ドイツ Cradle to Cradle認証というイノベーションエンジン

※本記事は2020年3月8日投稿のCELJブログから移し、記事題名を改めて「企業レベルの取り組みを知ろう」に掲載しています。

2020年1月31日、2月1日の2日間にわたり、Cradle to Cradle Congress 2020がベルリンで開催されました。

サーキュラーエコノミーの機運がますます高まる2020年、”Cradle to Cradle”の考え方は、欧州でどのような広がりを見せているのでしょうか。今年で6年目となるCradle to Cradle Congress 2020に参加してきました。今回は2回に分け、最初に企業レベルの話として、C2C認証の取得企業の取り組みについてお伝えします。

当日の賑わう会場の様子 (写真:筆者)

“Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)”(以下略称:C2C)は、サーキュラープロダクトのためのデザインコンセプトです。有害物を使用しない材料、循環利用を考慮した設計、ライフサイクルを繰り返しても材料の品質維持が可能である「高品質性」の特徴を持っています。90年代後半に化学者ミヒャエル・ブラウガート氏と建築家ウィリアム・マクドナウ氏によって提案されました。

70年代以降、研究者や思想家の間では、”パフォーマンスエコノミー”、”バイオミミクリ”、”ブルーエコノミー”など、のちにサーキュラーエコノミーの基本概念の元となる考え方が打ち立てられました。”Cradle to Cradle”もその1つです。エレンマッカーサー財団のサーキュラーエコノミーシステム図に取り入れられるなど、重要な位置づけにあります。

2005年にはCradle to Cradle certified ™ (以下C2C認証と略称)として最初の基準化がされました。現在、アメリカのCradle to Cradle Products Innovation Instituteが中心になり、この認証制度の管理をしています。

審査される品質カテゴリーは5つに分かれています。

・原材料の健康性

・材料の再利用

・自然エネルギー利用とカーボンマネジメント

・水スチュワードシップ

・社会的な公正さ

以上の達成度スコアはベーシック、ブロンズ、シルバー、プラチナの順で表示されます。

C2C認証を取得した製品・素材の数は、世界で約8000点(2019年9月時)にのぼります。

C2C認証というと、以前は建築資材や部品・素材など、どちらかというとB2B製品が目立ちました。ですが、2015年にサーキュラーエコノミー戦略が欧州委員会にて政策決定されてからは、ここドイツでも大手小売企業がC2C認証取得に積極的に前進し、話題になりました。

アパレル以外にもオフセット印刷用インク業界もC2C認証取得に積極的です。(写真:筆者)

その代表的な例として、アパレルリテーラーの欧州大手C&Aがあります。2017年に先駆け的にC2Cゴールド認証を取得した生分解性Tシャツをリリースしました。最近ではC2Cプラチナ認証(最高スコア)のジーンズもリリースしています。ディスカウント小売り大手のLidlも、2019年秋にC2C認証を取得した生分解性パジャマや寝具をドイツ国内約3200店舗で展開して話題になりました。

Cradle to Cradle Congress2020では、アパレル業界大手リテーラーとしてC2C認証取得の先駆け的存在として、C&Aのサステナビリティチーフオフィサーの方が登壇されていました。

C2C認証取得への取り組みは、アパレル業界でサーキュラーエコノミーに取り組む一環として5年ほど前にスタートしたそうです。一番包括的にカバーしていた規格が、C2C認証だったとか。しかし、その時点ではC2C認証はあまり知られておらず、内部の理解や協力体制の構築は挑戦のひとつであったこと、また、C2C基準に見合う技術的要件が高く、最初のTシャツの開発に1年という長い期間を要したことを話されていました。

また、消費者に買ってもらえるかどうか、消費者の心に訴えるかどうかも、大きな挑戦だったそうです。購買層は幅が広い一般客ということもあり、顧客の購買動機は価格、ファッション性、カラーなど、サステナビリティは必ずしも動機ではないのだとか。

なので、C2C認証の商品についてストーリーを、お客さんによく分かってもらえるような工夫をしているそうです。C2C認証製品は約400万着を販売したそうですが、量ではなく、”顧客のエンゲージメントと心に響くかどうか”が尺度だとも触れられていました。

また、これら自社でC2C認証を取得するまでの過程や、経験からの学びは、ファッション業界のサステナビリティ向上のために、Fashion for Goodと共同でオープンソースのツールとして公開されたそうです。以後、C2C認証を受けたサプライヤーから問い合わせがあったり、他のブランドが後に続くなど、素晴らしい現象が起きていると語られていました。

C&Aはこれらのサーキュラープロダクトの取り組みの結果、Sustainable Innovation of the Year Award2017(英)で倫理的企業責任ビジネス賞の受賞を筆頭に、以後、数々の賞を受賞しています。

ここからは私個人の感想ですが、このような例では、サステナビリティを入り口にイノベーションを創出している印象を受けました。C&AのようにC2C認証の取得過程をオープンソースで公開した例など、サーキュラーエコノミーの業界をリードしていこうとする姿勢や、尺度の変化は、大手企業によるサーキュラーエコノミー市場の到来を予感させます。

また、”認証を取ったら終わり”ではなく、常に高度な技術要件をクリアし、最高のスコアを目指す姿勢、そしてC2C認証だけでなく、同時にほかにも革新的なサステナビリティの取り組みを年々広げていくアクティブな企業姿勢は、一消費者の目から見ても先駆的でした。

しかし、サステナビリティが注目されるようになった昨今とはいえ、サステナビリティ製品の開発に渾身する企業側と、消費者側との意識の大きなギャップは、万国共通の課題のようです――顧客へどうしたらサステナブルな商品の良さをより良くコミュニケーションできるのかは、今後の大事なテーマであることは間違いありません。

C2C認証をイノベーションエンジンとして活用する大手企業が、これからも欧州で着実に増えていくのではないかと期待しています。

次回のブログでは、政策レベルでのお話をお伝えしたいと思います。

(ベルリン 佐原ツェアマン理枝)

———————————————————————————

この記事で取り上げたテーマについて、私たちと一緒に学んでみたい、より詳しく知りたいという方は、どうぞ下記よりお問い合わせください。》

info@circular-eco.com